CGSおだき税理士法人 > 会計・税務 > 仮想通貨 確定申告は必要?

こんにちは、千代田区神田の会計士・税理士事務所 CGSおだき税理士法人の馬場です。

 

今日は仮想通貨についての記事です。

 

最近、新聞やニュースなどで仮想通貨の記事を目にしない日がないくらいですね。

 

昨年の今頃は、仮想通貨をあまり意識していなかった人も多かったかと思いますが、昨年後半はビットコインをはじめ仮想通貨の時価相場がすごい勢いで高騰し、中には「億り人」と称されるような大変な利益を上げている人もいるようです。また、仮想通貨で買い物ができる店舗も出てきています。

 

仮想通貨はこの一年でいっきに世の中に浸透し、もはや『知らない、よくわからない』では済まされなくなって来ていることを実感します。

 

国税も、昨年ビットコインを使用して利益が生じた場合の課税関係仮想通貨に関する所得の計算方法を明らかにしました。

 

そこで今回は、確定申告に向けて仮想通貨の税務についてまとめてみました。

 

仮想通貨で儲かったら確定申告は必要?

 

仮想通貨で儲けたら、確定申告して納税する必要があります。

 

そもそも仮想通貨の利益は、所得税法上は原則として『雑所得』という所得に分類されることになります。『雑所得』とは所得税法上定められた他の9つの所得のいずれにも当てはまらない所得のことで、他の所得と合算される『総合課税』の対象となる所得です。

 

そのため、仮想通貨で利益が発生したら、給与所得や不動産所得などの他の総合課税の対象となる所得と合算して所得税を計算し、申告・納税する必要があるのです。

 

なお、給与所得以外の所得が20万円以下の場合には、確定申告をしなくても良い場合があります。仮想通貨の利益もこの条件を満たす場合には、確定申告は不要です。詳しくは『平成29年分確定申告の留意点まとめ』をご参照ください。

 

仮想通貨の利益はどうやって計算するの?

 

仮想通貨の利益は、売却、他の仮想通貨に交換、仮想通貨で商品を購入する際に発生します。

 

仮想通貨の利益は、それぞれ下記の様に計算されます。

 

売却したとき        ・・・ 仮想通貨の利益 = 売却額 - 取得価額

 

他の仮想通貨に交換したとき ・・・ 仮想通貨の利益 = 他の仮想通貨の交換時の時価 - 取得価額

 

商品を購入したとき     ・・・ 仮想通貨の利益 =購入した商品の価額 (税込金額)- 取得価額

 

このように売却額、他の仮想通貨の交換時の時価、購入商品の価額などの収入となる金額から、購入した金額である取得価額を差し引くだけの単純な計算式となりますが、仮想通貨を複数回購入している場合には、取得価額の算定の仕方が少し複雑になってきます。

 

国税庁は、同一の仮想通貨を2回以上にわたって取得した場合には、『移動平均法』という方法によって取得価額を求めることが望ましいとしています。

 

『移動平均法』とは仮想通貨を購入した都度、既に保有している同一の仮想通貨と加重平均する方法です。

 

例えば、ある年に下記の様な取引をしたとします。

 

4月1日 2,000,000円で4ビットコイン(以下、BTC)を初めて購入

 

5月1日 3,000,000円で3BTCを追加購入

 

7月1日 2BTCを2,400,000円で売却

 

8月1日 4,500,000円で3BTCを追加購入

 

この場合、4月1日時点での取得価額は、1BTC当たり500,000円(=2,000,000円÷4BTC)となります。

 

次に、5月1日時点での取得価額は、1BTC当たり714,286円(=(2,000,000円+3,000,000円)÷(4BTC+3BTC))となります。

 

そして、7月1日に売却した時の利益は下記の様になります。

 

利益額 971,428円 = 2,400,000円 - 1,428,572円(=2BTC×714,286円)

 

この時点でビットコインの残高は、3,571,428円(=5,000,000円-1,428,572円)、5BTC(=7BTC-2BTC)

 

さらに、8月1日に追加購入した時点での取得価額は、1BTC当たり1,008,929円(=(3,571,428円+4,500,000円)÷(5BTC+3BTC))となります。

 

この時点でのビットコインの残高は、8,071,428円(=3,571,428円+4,500,000円)、8BTC(=5BTC+3BTC)

 

国税はもう一つの方法として『総平均法』という方法も継続して採用することを条件として認めています。

 

総平均法とは、一定の期間に取得した仮想通貨の取得価額の総額をその一定の期間に取得した仮想通貨の総量で割ることで取得原価を算定する方法です。

 

上記の例をもとに、1年間の総平均をした場合を見てみましょう。

 

この年の取得原価は、1BTCあたり950,000円(=(2,000,000円+3,000,000円+4,500,000円)÷ (4BTC+3BTC+3BTC)となります。

 

そしてこの年の売却利益は下記の様になります。

 

利益額 500,000円 = 2,400,000円 - 1,900,000円(=2BTC×950,000円)

 

ビットコインの残高は、7,600,000円(=9,500,000円-1,900,000円)、8BTC(=10BTC-2BTC)

 

時価が値上がりしている局面では、上記のように移動平均法を採用した方が利益は少なくなりますが、値下がりしている局面では逆の結果になりますので、ご留意ください。

 

移動平均法は、購入の都度、取得原価を求めなければならないので管理に手間がかかる点がデメリットですが、売却などの都度、利益額が確定するので税金の計算がし易いというメリットがあります。

 

一方、総平均法は、最後の取引が終わるまで利益が確定しないというデメリットがありますが、購入の都度、取得原価を計算しなくても良いので管理に手間がかからないというメリットがあります。

 

仮想通貨の取得を頻繁に行場合は、総平均法を採用した方が管理がしやすいかと思われます。

 

損失が発生した場合は?

 

さて、これまでは、利益が発生する場合を中心に書いてきましたが、損失が発生した場合にはどのような扱いになるのでしょうか?

 

仮想通貨の売却等によって損失が発生した場合、他の仮想通貨で発生した利益のほか、他の雑所得とも通算することができます。

 

例えば、仮想通貨Aの売却で損失が△500,000円発生し、仮想通貨Bの売却で利益が800,000円発生している様な場合、他に雑所得がなければ確定申告の対象となる雑所得は300,000円ということになります。

 

なお、雑所得が合計でマイナスになった場合、他の所得と損益通算することはできません。つまり、給与所得や不動産所得などの他の総合課税の対象となる所得から雑所得で発生した損失を差し引くことはできませんのでご留意ください。

 

仮想通貨が分裂しとき、マイニングで新たな仮想通貨を取得したときの扱いは?

 

2017年8月にビットコインから分裂し新たな仮想通貨であるビットコインキャッシュが誕生しました。また、仮想通貨のブロック生成であります『マイニング(採掘)』によって新たな仮想通貨を取得することができます。

 

仮想通貨の世界では、現実の通貨ではなかなか考えられないような事象が発生しますが、この点についても国税庁は税務上の扱いを明確にしています。

 

まず、仮想通貨が分裂して新たな仮想通貨を取得した場合はどのような扱になるのでしょうか?

 

結論から言えば、分裂して新たな仮想通貨を取得しただけでは何ら利益を上げていないので、確定申告の対象となる所得は発生しません。

 

ただし、分裂によって取得した仮想通貨の取得価額はゼロとなりますので、その後、分裂により取得した新たな仮想通貨を売却、交換、商品購入をしたときには利益が生じることになります。

 

次に、『マイニング(採掘)』によって新たな仮想通貨を取得した場合はどのような扱いになるのでしょうか?

 

マイニングによって新たな仮想通貨を取得した場合には、収入(その取得した仮想通貨の取得時点の時価)から必要経費を差し引いた差額が、事業所得もしくは雑所得となり確定申告の対象となる所得になります。

 

そして、そのマイニングにより取得した仮想通貨を売却、交換、商品購入をした際の利益計算に用いられる取得原価は、取得した時点での時価となります。

 

まとめ

 

○仮想通貨の売却、交換、使用から発生する利益は原則として『雑所得』として確定申告が必要になります。

 

○仮想通貨の利益は、収入額(売却額、交換通貨の時価、購入した商品の価額)から取得原価を差し引いた金額となります。

 

○取得原価の計算方法は、『移動平均法』と『総平均法』があります。

 

○仮想通貨の損失は他の雑所得との通算は可能ですが、他の所得(給与所得など)との通算はできません。